移りゆく時代とスーツの栄枯盛衰

FASHION History Vision

『COOL BIZ』や『働き方改革』『リモートワーク』など、ここに来て一気に進んでいる『脱スーツ』によるビジネスウェアのカジュアル化。

今、社会がDX化(Digital Transformation)を進めていこうという流れの中で、戦後の高度経済成長期から現在の間まで、幅広く仕事着として定着してきた『スーツ』の役割は、今度どのように変化していくのでしょうか。

過去の歴史を振り返りながら、今後の変化を予想してみました。

現代のスーツの役割

以前【 スーツの歴史 】という記事を書きました。

この記事にあるように、現代のスーツの型も、もともとは上流階級の『寛ぎ服』として着られていたもので、その時代ではカジュアルスタイルとして認識されてきたものです。

それが、時代の流れで更にカジュアル化が進み『寛ぎ服』が現代の『ドレス』の位置付けに変わっていきました。

つまり、大きな視点で考えれば、時代の流れが変われば『カジュアル』と『ドレス』の位置付けや概念が変わることは、決して不自然なことではなく、当然の流れなのです。

アメリカの階級社会

アメリカ(東海岸)には、面白いほど分かりやすい服装の階級が存在します。

  • スーツ
  • セールスマン
  • オフィサー
  • ワーカー

階級の名から想像がつくように、上から下へと階級の格差があり、一番上の階級層にあたる『スーツ』は自分と他人との身分の差別化を目的とした【 自己表現のためのツール 】として着用されており、その格差に準じたビジネスウェアが存在します。

この階級の差別化こそが、現在のスーツが持っている役割と言ってもいいのかもしれません。

対して、西海岸はフリースタイル。

Appleのスティーブ・ジョブズなどをイメージしてもらうと分かりやすいと思いますが、既存のスタイルに対抗するように、新たなスタイルが生まれ、定着している地域も存在します。

では、日本ではどうなのでしょうか。

リクルートスーツがカッコ悪いのは何故なのか

日本の『リクルートスーツ』をかっこいいと思う人がいるでしょうか。

私個人としては、正直とてもかっこ悪いと思ってしまいます。

これは何故なのでしょうか。

その原因には【 均一化された人間の量産 】という戦後の教育が深く関わっていると思います。

教科書が指定され、学習内容の標準化が進むと、他人と違うことが悪とされるようになっていきました。そして、他人と同じことが良しとされるようになると、均一化された人間が量産されていきました。

その意味では、リクルートスーツもその学校教育の延長のようなもので、企業への忠誠を誓う通過儀礼として存在しているだけのもののように感じてしまいます。

そこには、本来の自己表現としてのツールとしてのものではなく、型にはめられた魂の無いスタイルだからこそ、カッコ悪く見えてしまうのではないでしょうか。

もうひとつ例を挙げておきます。

毎日の満員電車で、汗だくになりながら、スーツという強制的な『型』にはめられ、規則だからと仕方なく着ている人のスーツスタイル。

こちらはどうでしょうか。

残念ながら、これもカッコ良く見えていないはずです。

やはり、自己表現のツールとして有効に活用するからこそスーツスタイルはかっこいいのではないでしょうか。

スーツの二極化と本来あるべき姿

戦後教育を受けた現代の日本人には『制服』か『私服』かという、二択の考え方しか持たないまま、大人になってしまっている人があまりにも多い気がします。

先程の【 均一化された人間の量産 】という戦後の教育が深く関わていると考えれますが、ファッションの基本原則である『TPO』を選びながらファッションを楽しむということを、制服という型で強制的に排除されたことにより、本来必要な『思考する力』を失ってしまったとも言えます。

今後は、ライフスタイルや働き方の変化で、さらに二極化(厳密に言えば多極化)が進むはずです。

そうなると、中間層のいわゆる『制服の延長として着用されてきたビジネススーツ』は、一気に衰退していくはずです。

一方で、上流層は自分と労働者階級をどのように差別化するのかという意味合いで服を選ぶため、ここでのスーツの需要は大きく拡大することはないにしても、なくなることはないはずです。

特に、腕のたつテーラーによる古き良きテーラリングの世界は生き残っていくのではないでしょうか。(既製服の延長である『カスタムオーダー』のことではありません)

現代の『制服の延長として着用されていたビジネススーツ』の需要が減ることで、今までそこをターゲットとしていた企業などは、大打撃を食らうことになります。

しかし、一見矛盾するようですが『自己表現としてのツール』であるスーツを、本来の伝統的でカッコいいものとして、正しい意味で守っていくためには、今の流れの方が良いのかもしれません。

まとめ:移りゆく時代とスーツの栄枯盛衰

世界の歴史では、半ズボンにホーズのスタイルからスラックスの時代へ。
日本の歴史では、江戸から明治にかけての着物から洋服の時代へ。

まさに今、また新たな時代に移り変わっていこうとしています。

考え方によっては、型にはめられた個性のない均一化されたスタイルではなく、多様性を認め合う、素晴らしい時代に突入したとも捉えることができるのではないでしょうか。

本日はここまで。

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